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英語を使って仕事や生活をしている人たちの間でも好評だったスピーチ。
トヨタ自動車社長の豊田氏が母校の卒業式でスピーチをされたということで、いろいろなところで取り上げられました。
私の感想は、非ネイティブとしては目標にするべき一つの到達点かなと。発音は日本人のアクセントが残っているけれど、子音は子音のままで発音しているし、はっきりと話すので、おそらく日本人の英語に慣れていない外国人にも聞き取りやすいはず。
少なくとも、冗談を言って笑いが取れるというのは、すごいことですよね。専門的な話は前後の関係で類推ができるけれど、冗談はそれが難しい。なので、聞き取ってもらわないと進まない。それと、笑いのツボがどうも国によって異なるので、MBAの卒業式のような国際的な場で大勢を笑わせる冗談というのは、けっこう難しいと思います。
日本人のよくやる失敗が、過度な謙遜をして笑いを通り越して聴衆が引いてしまう、というのがあります。その点、豊田氏は、勉強ばかりしていて学生時代は楽しみ切れなかったけどその後は夜の帝王、そして学生時代もドーナツという喜びを見つけた、と、ほど良い自虐(深刻過ぎない)と世界中でだれもが知る大企業の御曹司社長でありながら庶民的なところを見せるのは、なかなか印象的。
出だしも素晴らしく、突然、皆さんの就職の心配はありません、トヨタの仕事をオファーします!人事部とはまだ話していませんが・・・と始めるのは、学生の注目を一手に集めるはず。日本のように就職の準備を整えてから卒業する文化ではないので。しかし、後で紹介記事を読むと、実は就職の心配をする人は少なかったのかも。
下に引用のとおり、半分以上がいつかは家業を継ぐ立場の学生ということなので、就職の心配が必要なのは半分以下(それでもそれなりの人数かな)。しかも、学部卒で社会勉強をしてMBAで仕上げをしたらそのまま家業の継承なのかもしれないですね。そのあたりの風習は全く知識がないので類推ですが。
"More than 50% of Babson students come from family business backgrounds, so Toyoda’s perspective as a third-generation family business leader was particularly relevant." (Babsonの学生の半数以上は家業のある家の出身者であるため、三代目のビジネスリーダーである豊田氏のスピーチは大いに意義がある)
でも、これを踏まえると、今度は子供のころの夢から今に至るエピソードが絶妙だったのかも。タクシードライバーという子供のころの夢がそのままは叶っていないけれど、車を運転できて、車に囲まれる今の生活はそれに近い、と。家業を継ぐ学生たちの中には、もしかすると何かをあきらめる人もいるかもしれず、そんな人たちには夢が描いたとおりに叶わなくても満足できることを知るのは良い機会になりそうだから。
色々な意味で勉強になるスピーチでした。
日本を代表する企業であるトヨタ自動車の社長が、海外でも人の心を動かすスピーチをされる、というのは少し嬉しくもなります。
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