英語学習帖

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offensive

www.theguardian.com

"offensive" (不快な、侮辱的な)

日本の国営に近いTVチャンネルであるNHKがアップしたビデオが世界で批判を浴びています。私もさすがに抗議しました。

しかも、私はTwitterで見ましたが、TVでも放映されたのですよね。私の老齢の母の情報源はTVのみ。そして、視力の低下とともに字幕の情報を読むのが苦痛で、といってナチュラルスピードの英語を聞き取るのもつらくて、ということで母は日本語のTVしか見ていないわけです。そんな人たちはこのビデオを観たら、そのまま信じてしまうかもしれない。何といっても法律で受信料の支払いが義務付けられているTV=ほぼ国営ですよね。そんなTVが流すコンテンツの影響力を考えると、恐ろしいです。

では、どんなコンテンツだったか。これは怒り狂う黒人男性が、経済格差に怒り、コロナウイルスの影響で失業者がどれだけ増えたか、と怒りを自由の女神にぶつけ、というもの。まるで、今回の抗議活動は失業者が経済格差に対して抗議しているように見えます。発端となった人種差別による人命の軽視の問題、格差の元となっている構造的差別の問題には触れていません。

400年前に突然船に乗せられ「貨物」としてアメリカ大陸に連れてこられた黒人。経済的にあまり豊かではない白人労働者と黒人とを分断させる手段として、黒人に対する人種差別を推進し始めたエリート層の白人。奴隷制により搾取され続け、19世紀の南北戦争奴隷解放を経ても差別が続き、大学で白人専用の部屋に黒人が入った記録は1960年代。

https://americancenterjapan.com/wp/wp-content/uploads/2015/11/wwwf-pub-freeatlast.pdf

それでも、オバマ大統領が誕生したり、当時のファーストレディであるミシェル・オバマさんが大人気だったり、時代は変わりつつあるように見えました。といっても、ミシェル・オバマさんもプリンストン大学で白人と同室になったら、白人の同級生の親が学校に抗議したという話もあって、それが30年くらい前に過ぎないことに衝撃も受けるわけですが…。

その後も人種差別による殺人事件は起こり続け、今年も。そして、私たちは人種差別によって警官が人を殺害する瞬間をビデオで目撃してしまいました。その衝撃と、蓄積された悲しみや怒りが重なって、いま抗議活動をしているのに、経済格差の問題と話を矮小化どころか誤解を与えるようなまとめ方をしたNHK

しかも、この動画の次のTweetは「アメリカ社会は、考え方の違う両者が互いにののしり合って、どんどん分断が深まっていってしまったんだ」というもの。人種差別があって、そこに抗議する人に対して、ののしり合いと表現。これもひどいものです。もちろん、多くの抗議の声が寄せられていました。削除するべきです。この元となった番組は子供向けの教育番組とのことで、そうであるなら猶更。

 

さて、掲載の翌日、多くの抗議の声を受けて問題の動画は削除されたものの、謝罪の文章はまたひどいものでした。冒頭に紹介したGuardianの記事から引用。

NHK later apologised and removed the clip from its website, saying it had done so after receiving “lots of criticism and other opinions on Twitter.” It added: “The clip was posted after a lack of consideration, and we would like to apologise to anyone who was made to feel uncomfortable.”

NHKはその後、『多くの批判や意見をTwitterで受けた』、と謝罪し動画をウェブサイトから削除した。『その動画は配慮を欠いており、気分を害した方がいたらお詫びしたい』と続けた)

The clip, made for a programme that aims to explain world events to children, made no mention of George Floyd, whose death while in police custody sparked the protests, or police brutality.

(子どもたちに世界の出来事を教育する番組のための本動画は、抗議活動の発端となった警官の不当行為によって死亡したジョージ・フロイド氏に言及することはなかった)

Social media users condemned the video for perpetuating stereotypes of African-Americans. Others pointed out that all of the protesters in the clip were black, even though people of all races have been taking part the protests, which have spread to other countries, including Japan.

ソーシャルメディアユーザは、この動画がアフリカ系アメリカ人ステレオタイプを恒久化するものだとコメントした。また、この動画に登場する抗議活動の参加者がすべて黒人であった、実際には日本を含む多くの国で活動は広がり、すべての人種が参加していたのにと指摘する声もあった)

 

配慮を欠いていた、気分を害した人がいたかもしれないから、という謝罪ではなく、誤った情報を拡散しようとしたことを謝罪するべきだと考えます。

 

簡単な実験ですが、自分の責任でないことでスタートラインが変わるということをわかりやすく説明する動画。日本でも、親がそろっていて、父親が家計をまかなえて、携帯電話の料金支払いを気にしなくて、私立の学校に通えて、次の食事をどうやってもらえるか気にしたことがない、このすべての条件を満たせる人ばかりではないでしょう。家庭の円満も社会的・経済的な不満がないほうが維持しやすいことを考えると、差別によって追いやられると、ほぼすべて満たせなくなるのです。それは、おかしいと声を上げるしかないでしょう。

www.youtube.com