英語学習帖

日々の職場英語・生活英語メモ:ビジネスに使用する英単語や英語表現、話題になりそうな海外メディア記事を紹介しています

Black Lives Matter

いま、アメリカの各所で抗議運動が行われていて、目にする機会の増えたハッシュタグ #BlackLivesMatter。同じ名前の団体が組織されたのは2013年。当時、高校生だったTrayvon Martinさんが銃で殺されたにもかかわらず、十分な捜査もなく、発砲した自警団の男性が無罪となったことに端を発する活動です。

私のような日本人が触れるのは難しい言葉だなと思うものの、今回のミネアポリスは衝撃的で、それでも周りには暴動だけを見て「アメリカって怖いね」という人たちもいたので、彼らに届くかどうかは別にして紹介しようと思います。日本でも、外国人差別の事件と抗議活動があったばかりですし。

matter (重要である、問題である)

"black lives matter" (黒人の命は重要である)

ここで"all lives matter"という言い方をする人もいるみたいですが、これは女性の人権を訴える運動に「男性も大変なんだ」とぶつけてくるのと似ているように思いました。みんなの命が大切なのは当たり前だけど、いま、軽視されている命があるから言及している。男性も大変なのは理解するけど、いま、軽視されている人権があるから言及している。

本当に悲しいことに、定期的に肌の色によって、警察の不当な取り調べを受けたり、理由もなく射殺されたり、という事件がアメリカでは起こっています。同じ人間なのに、不当に命が軽く扱われています。そして、今も人種差別は残っていて、私もアジアの見た目で差別を受けることはあるけれど、やっぱり比べ物にならない。例えば、ニューヨークに行くと、あまり客単価の高くない飲食店で働くのはアフリカ系又はスペイン語を話す人たちであったり、職場では白人かインド系が多数派であったり、バックグラウンドによって世界が分断されているように感じてしまいます。なお、アフリカ系という言葉も難しくて、blackとafricanのどちらが適切か、という議論も度々。ただ、自分がyellowと言われるよりはasianの方が歴史を考えると良いかなと感じてアフリカ系という言葉を使うことが多い一方で、後者は文化的な背景も含む印象があるため人の移動が活発な今の時代には前者で人種的な属性に言及するだけのほうが中立的かもしれない、という考えも当然あります。未だ、私には正解が分からない。

ヘイトクライムだけでなく、Covid-19の死亡者に黒人が多いとも言われており、感染率と死亡率のどちらの話かよくわからないままに色々な仮説があります。例えば、人と接する職業に従事する人が多いからではないか、公共の場でマスクをすることに抵抗があるからではないか、医療へのアクセスが良くないからではないか、と。いずれも差別を背景にそれらしく見えてしまいます。職業に貴賤がないのは当然とはいえ、なぜ、リスクが高いのに賃金が抑えられがちな職業に特定の背景を持つ人が多いのか、と考えると、教育も含め機会は平等ではないのだろう、と思います。公共の場でマスクをすることに抵抗があるのは、マスクをしたことによって理不尽に攻撃されたり場合によっては射殺されてしまうリスクがあるから、という説があります。医療へのアクセスも、アメリカは日本のように国民皆保険ではないし医療費が高いので、社会経済上の立場に左右されます。

そんな状況だから、あらためて"black lives matter" (黒人の命は大切なもの)と当たり前のことを言わなくてはならない、と。そして、最近のデモの映像を見ると黒人以外も沢山いて、不当な扱いには怒りを覚える人は増えています。私も。また、特権を与えられてしまっているから、と抗議活動をする人たちを守るために警官との間に立つ白人女性の姿には勇気づけられました。

www.courier-journal.com

一方で、ミネアポリスの店舗の破壊行為を白人がして、抗議活動のせいにしようとしている、などの噂も聞くと悲しくなります。しかも大統領が扇動している、とも。

 

ところで、アメリカの状況も悲しいけれど、日本でも、クルド人の男性が不当に拘束され警官に負傷させられる事件がありました。この事件の映像を見て、何よりも衝撃的だったのは、暴力を振るわれる男性を見て笑っている声が入っていたこと。ミネアポリスの事件で、"I can't breathe" (息ができない)の声を聴いて笑う人がいたら、かなり非難されるでしょう。でも、日本では、複数人で笑いながら見ていられる人たちがいるわけです。見た目や背景が異なっても、目の前の人は尊厳を持つ人間である、ということを広く共有しなければ。

mainichi.jp